姉の婚約者の教師と生徒が同居することになったのだが

♢誕生日プレゼント


 学校だよりに先生の誕生日が載っていた。
 今日がその日だ。そのために、私はわざわざプレゼントを用意してしまった。今までケガの時に世話になったお礼の気持ちを込めただけだ。特に意味はない。使えそうなもの……。色々迷った。

 アクセサリーの類は意味深すぎるし、あいつはつけないタイプだし。
 置物やマグカップや時計やハンカチなど色々、考えに考えた。
 食べ物だと形に残らないし――って私は形に残したいのか?
 結局、一番使うであろうタオルをプレゼントすることにした。
 なんて言って渡そうか?
 ドキドキしながら、帰宅を待つ。
 渡すタイミングを見計らう。
 親がいるので、外で渡すことに。
 どれくらい待っただろうか?
 流牙がようやく帰ってきた。
「どうした?」
 少し驚いた顔で私を見た。
「これ、今までのお礼。今日、誕生日でしょう?」
「あぁ、ありがとう。自分でも誕生日だってこと忘れいてた……」
「おまえは、誕生日いつだ?」
「もう過ぎたよ」

 すると一瞬、先生は何か考えて思いついたようだった。

「これ、プレゼントのお礼」
 先生は道に咲いていた一輪の花を差し出した。
 それはきれいな花で人生初の男性からの贈り物でもあった。
「これは仮のプレゼントで、あとでちゃんとしたもの用意するから」
「いいよ。気を遣わなくて」
 家の中では彼のためにケーキとごちそうが用意されている。
 彼はそのもてなしに、少し涙ぐんでいたように感じた。
「今までで一番幸せな誕生日です。ありがとうございます」
 彼は、丁寧にお辞儀をした。
「寿くんはもう家族なのだから、遠慮しないで食べてね」
 お母さんもお父さんもみんなが笑顔の誕生会だった。