姉の婚約者の教師と生徒が同居することになったのだが

♢先生の寝言

 先生は疲れてソファーで寝ていた。
 誰もいないので、近づいて顔をみつめてみる。
 やっぱり、整った顔をしている。
 人気があるのも少し納得だな。

 寝言をいいながら、急に私のことを抱き寄せる……。
 何? この、急な展開は?
「……あ……か……り……」
 かすかな寝言で、あかりって言ったよね?
 さらに寝ているこの男は、私を自分のほうへ抱き寄せた。
 寝ているんだよね? 何の夢??


♢流牙先生視点 流牙の夢の中

 あかりが俺の前にいる。
「どうした?」
「先生、好きだよ」
「それは……困る。俺は担任だ」
「好きなものは好きなの。しょうがないでしょ」
 あかりが俺に抱き着いた。俺は彼女を受け止めて……
 キス……? この態勢はキスなのか……?
 俺はやっぱり、あかりのことが好きだというのか??

 唇に何かが当たった?
 あれ? なんだ、夢か?
 このような夢を見るなんて、どうかしているな。
 思春期男子みたいだな。
 ――と思ったら…………目の前にあかりがいた。
 しかも顔が近い。これは夢の続きだ。きっとまだ夢なのだ。
 でも……まてよ、現実か??

♢あかり視点 責任取って

「先生、私の夢。見ていたでしょ?」

「いや……違うけど」

「あかりって名前、呼んでいましたよ」

「そう……だっけ??」
 さっきの唇の感触? 俺はキスでもしたのか??

「俺、なにかしたのか?」

「抱きしめてキスしたくせに」

 先生の顔が、耳まで真っ赤になって、土下座して謝られた。
「こーいうところが古くさいなぁ。まだ若いのに」

「本当にすまない。眠っていたとはいえ、そんな不謹慎なことを嫁入り前の女性に俺がしたなんて。謝っても謝り切れない」

「じゃあ、責任とってくれる?」

「責任って……?」
 土下座状態の先生は下から見上げた。

「ここのうちにずっといて」
 私は上から少し偉そうに命令した。

「でも、赤の他人の俺がそんな図々しいことできないだろ」

「あと数か月で私は卒業するよ。卒業したら付き合っても問題ないよね」

「俺でいいのか?」

「逆に私ではだめかな?」

「だめとか……そーいうわけではなく。……今は担任だから」

「好きなの? 私のこと。寝言で呼ぶくらい」

 先生の顔は更に真っ赤になっていた。先生はまっすぐ私の目を見て

「卒業したらちゃんと付き合おう、だから宮沢君とは別れてほしい」

 手を差し出した。握手だ。
 手をちゃんと握ったのは、これがはじめてだ。

「いつから私のこと好きだったの?」

「……忘れた」

 私も彼も、この日、握った手を洗えないでいたことは、お互い知らない事実だった。




 瞳を開くと、目の前に赤面状態のあかりがいた。
 さっき唇に何か当たったのは夢だったのか?

 すると、あかりが俺の頬にキスをした。
 え……? 不意打ちだ。
 これはまずいのではないか? 教師としては。