「…そんなこと言ってさぁ…。じゃー紅羽は次唐獅子様に狙われても、逃げ場なく攫われちゃっていーんだね?」



氷のようなまなざしに、背筋が粟立つ。



「おれはさ、"紅羽が攫われる"っていう万一の可能性をどーしたら無くせるかずーっと考えてるんだ」



ふらり



表情のない相貌が目の前にくる。



「罰当たり?そんなもんおれが全部受けてやるよ。紅羽を守れるなら神だって利用する。おれが死のうと、冴や都や八尾が死のうと、誰が死んだって、紅羽さえ生きていればなんだっていーんだから」


「す、ぐる…」


「唐獅子様のことでバカみたいに躍起になってる冴は見ていて滑稽だけど、あいつの考えには大賛成なんだ」


「ねぇ…」


「神に背いても守らないとね。大事な大事な、おれたちの紅羽を」



愛おしげに目を細める優に、私の肩は震えていた。



いつかの冴のよう。
本能に訴えてくる、ほのかな狂気。



私の怯えに気づいているのかいないのか、優はいつものアンニュイな表情に戻り、そっと離れた。



「じゃーこのことはあとであのふたりにも共有しよーね」


「う、うん…」



あまりの温度差に脳が追いつかず一瞬返事が遅れるも、優はそんなこと一切に気していない様子だ。



こんなこと思いたくないのに、目の前の優が怖い。



冴が言っていたように、優も知らないうちに変わってしまったのだろうか。



変わらないものなんて…ない。