「じゃあ訊くけど、いきなり現れたあの祠は一体なんなの?説明できるのかよ?誰がどう見たって意図的なものだったじゃねーかよ」


「それは…」


「供物の髪だってそうだ。もしあれが唐獅子様を祀っている一部だとしても、髪束一本なんてあまりに気持ち悪ぃよ」



捲し立てる冴に、言葉を挟む間もなかった。



「そもそも唐獅子様はこの土地の守り神なんだろ?お山の本殿にもしっかり祀られてる。それを作り話だなんて言うのはおかしいんじゃねーのか?」


「……」


「とにかく、生々しいんだよ、すべてが。オレにはなにか良くないことが始まっちまったようにしか思えねぇ」



信心深く、この村に暮らす者としてもっともな冴の言葉。



そのはずなのに、なぜだろうか。





「唐獅子様はいる。絶対に」





狂信をはらんだ、焦点の震える双眸には、より根深く色濃いナニカが潜んでいるような気がした。



「わ、わかったから…手痛いよ…」



気迫に押されていた私の声に、冴は「悪い」と正気を取り戻したように離れる。



気まずい空気が流れる。
なんだか朝から心臓に悪いことばかりだ。