唐獅子様が「来る」
言葉の羅列自体は簡単なはずなのに、理解するのに長い時間を使った気がする。
「…来るって…この村に?唐獅子様が?」
「そうだ。唐獅子様の結界が壊れた。それに…供物だった髪が跡形もなく消えていた。きっと贄を探しに村へおりてくる」
けっしてふざけてなどいない。
本気のトーンに無意識に足が後退する。
「ま、待ってよ冴。あの祠が結界とは限らないじゃん。昨日みんなで話したでしょ?それにあんなにボロボロだったし、きっともうなんの役割も果たしてないよ」
「あれは結界だ。間違いない」
「唐獅子様はあくまで言い伝えだよ?本当に贄を攫いに来るなんて─」
「来る。唐獅子様は存在する。
オレは知ってる」
あまりにキッパリと断言する冴。
その目は完全に据わっていた。



