「くーれは、オレにもそれやってよ」 耳に入るどこか甘えたような声。 前の席の冴(さえ)がくるりとこちらを向いた。 健康的な小麦色の肌には、何滴かの汗の粒が浮いている。 「ん」 言われるがままに下敷きであおげば、冴は気持ちよさそうに大きな目を細めた。 その姿はまるで風に吹かれる大型犬のよう。 人懐こい性格の冴は誰にでも好かれる人気者。 そして、私の幼なじみだ。