なんとなく…だなんて、はぐらかされたようにしか思えず釈然としない。



それに、冴はひとりで一体なにをしに来たのだろう。
意図がまったく見えないのだ。



脳裏に浮かぶは先ほどの"おまじない"と称する行為。
あれをしにわざわざ来たとは考えられない。



あんなの幼なじみ同士だとしても過激だし、やりすぎだ。



けっして本題ではなく、どこかで冴のスイッチが入ってしまった際の副産物なのは分かってる。



それでもお腹の底には、苛立ちのような恥ずかしさのような、言葉にできない感情が疑問と一緒に渦を巻いていた。



隣に立つ幼なじみの初めて見た"異性の顔"が、隙無くよみがえってくる。



胸の鼓動なんかさっきからずっと速くて、私…こんなの知らない。



冴の唇に触れられた首すじが、ジクリと痛んだ。



慣れない感覚をひとりで持て余していれば
横から「なぁ」と呼ばれる。




「紅羽に、紅羽だけに話したいことがある」


「え…私、だけ?」




突如、切り出された本題。



あまりにも空気感が違くて、一瞬たじろぎながらもその目を合わせた。



声が音になる直前、冴の表情には確かな影が落ちた。
胸の奥が不穏にさざめく。






「唐獅子様の祠が
真っ二つに割れていたんだ」