終業のチャイムが鳴る。



それは田舎特有の澄んだ空気によく響いていった。



「はぁぁ…」



暑くて気だるい一日の授業を乗りきってようやく放課後。
背中に流れる黒髪が鬱陶しい。



ひと息ついて窓から外をながめれば、地平線を囲む、奥深い緑の山々が目に飛びこんでくる。



生まれたときから見てきた景観。
この圧を感じるほどの大自然は、いつ見ても村全体を守っているみたいだ。



「あっつい…」



蒸れた首もとをパタパタと下敷きであおぐ。



クーラーなんて無い教室。
あるといえば申しわけていどに取りつけられた扇風機のみ。






季節は7月、夏。


高校最後の夏休みが近づいていた。