「……結界なのかもしれないね」
ひとりこの場を静視していた優が、ふとこぼした。
まさか、なんて流すことはできなかった。
祠にはまぎれもない唐獅子様の名前が刻印されているから。
「オレもそう思う。見ろよ」
冴が指さしたのは祠の中腹部。
くり抜かれたような空洞がある。
立ちすくんでいた私と優は、共に膝を折ってしゃがんだ。
目に入ったのは、縄紐のようなもので束ねられている黒い物体。
「なに、これ」
「おそらく…髪の毛だろうな」
断定はできねぇけど、と冴が加える。
ごくりと生唾を飲んだ。
「贄の代わり、なのかもね。
人の髪というものは、神格的なものとして扱われることもあったから」
都はそう言うと、祠を一瞥してからゆっくりと立ち上がる。
それに倣うように私たちも腰を持ち上げた。
ぞわぞわと背筋に冷たいものが這う。
空が血のように真っ赤に燃えていた。
えもいえない不安感がたちこめる。



