うしろに体が傾いた。



それは、突然腰にまわってきた腕に引き寄せられたから。




「なんの用だよ……鳴海」   




川栄くんが私の背後に向けて顔をしかめた。
負けじとふたたび手を伸ばしてくるけど、しなやかな指に払われてしまう。




「だめだって。あきらめてよ」




私の視界が鳴海くんの背中だけになる。
おどろいて一歩後退してしまうけど、その気配すらすぐに気づかれて、後ろ手で捕まえられた。




「紅羽ちゃんは誰に縛られるわけにもいかないんだ。少なくとも、この村にいるあいだは」 


「はぁ?なに言ってんだよ。それは山岸が決めることだろうが」


「そうかもね。でも見たかぎり紅羽ちゃんは川栄との関係を望んでなかった」


「覗き見かよ、趣味わりぃ。んなこと言ってるおまえも、大概俺と変わんねぇと思うがな」


「うん。否定はしない。だからこそ、やすやすと渡すつもりはない」




鳴海くんと川栄くんが淡々と、しかしときおり煮えたぎる揺らぎを忍ばせながら言葉を交わしていく。



私はなにを言えばいいの。
どうすることが正解なの。



ぐるぐる悩んでいると、鳴海くんにあっさり手を引かれ


「もうしつこいから逃げちゃおうか」


いたずらに目を細めた彼に、連れ去られた。