「私は村のみんなにこのことを伝えたほうがいいと思う。唐獅子様が降りてきたと。たとえ犠牲が必要だとしても、理不尽に襲われてその人が贄だなんて違う気がする」


「…まぁ、それが第一だよな。とにかく人集めて、人身御供(ひとみごくう)じゃない別の方法で神さんのご機嫌取れねぇか話し合うべきだ」



私の提案に冴がうなずいた。
言葉選びは不敬そのものだけど間違ってはいないし、きっと今こそが私たちの土地神様と向き合うタイミングなのかもしれない。



了承を伺うべくあとの2人へ目線をやれば、優が同じようにうなずいてくれる。
だが一方、都だけは難しそうな色を浮かべていた。



「都?大丈夫?」



わずかにうつくむ顔をのぞきこむと、都はハッとしていつもの笑顔を貼りつけた。



「うん、なんでもないよ。俺も紅羽の案に賛成」



取って付けたように言った都。
おかしい。なんとなくわかる。
間違いなく心からそう思っているトーンではない。



どこかちぐはぐな都の様子を訝しく感じた。



探るように見つめれば、都はん?と穏やかな瞳を返してくれるけど…



果たしてこれは本物なのか…



小さいときからずっと一緒にいるはずなのに、都の心内がまったく分からなかった。



…ううん、都だけにかぎった話じゃない。
冴だって、優だってそうだ。



みんな最近おかしい。



私の中で形作られていた3人の輪郭が、徐々にぼやけていくみたいな…



そんな不安に駆られた。