「でもまぁ、そうか。なるほどな」

「冴、なにが?」

「いや、べつに。なんでもねぇ」



冴は大したことでもないように真剣な表情を緩めた。
胸にもやもやが募る。



数日前の祠への視線の件といい、私たちを蚊帳の外にしてひとりで煮詰めている様子といい。
冴はここのところおかしく見える。



ふいに、私へ唐獅子様のことを忠告した際の、狂信的な双眸が脳裏をよぎった。



やっぱり…なにかあるのかな。



「なるほどね。ふたりが逃げ込んだお社には、唐獅子様が逃げ出すほどの何かがあるかもしれない…か。その何かの正体は置いといて、避難場所のひとつにしてしまう案は俺も賛成かな」



すんなり首肯した都に驚いた。
誰よりも常識人なこの男が倫理的な部分を指摘しないなんて。



固まる私に、都は不敵に笑った。



「紅羽が攫われるか、神に祟られるか。
どちらが怖いかなんて選ぶまでもないよ」



優しげなふたつの目には、畏れすら近寄らせない深く濃い色が浮かんでいた。



あれ以降、都は私のそばを離れようとせずさらにぴったりと密着してくる。



話すトーンとは裏腹に、少し目線を下げれば私の手を捕まえるように握りしめている。



どこにもいかないよという意志を込めて握り返すも、その力が弱まることはなかった。