「紅羽…」
隣から都が呼ぶ。
形のいい眉は八の字に下がり、心配でたまらないといったなまなざしが揺れていた。
「都、ごめんね、私…ひゃっ」
突然、都は私の体をぺたぺたと触り始めた。
肩や腰、腕にお腹。
隅々までくまなくまさぐられる。
「ちょっ、都…くすぐった…」
「ほんとに?本当に大丈夫なの?どこか傷ついたりしてない?」
頬をふんわりと両手で包まれて、その手はかすかに震えていた。
胸が締めつけられる。
「大丈夫!このとおり元気だよ!どこも痛くないし、怪我もしてないから」
空元気にすら感じるほど明るく言えば、都はなんともいえない表情を浮かべたあと、大きな瞳をつらそうに細めた。
そして強く抱きしめられる。
肩口に顔をうずめられ、サラリとした黒髪が首すじをくすぐった。
「み、都…」
体をほんの少し動かせば、私を包む腕に力が加えられる。
まだダメって言われているみたいで、しばらくのあいだ都の腕の中でじっとしていた。
冴にも都にもここまで心配させてしまうなんて…どれだけ軽率だったんだろう。
「ごめんなさい…」
喉から出たのは、後悔でいっぱいの言葉だった。



