「七月、僕に教えて?」

 優しい声色でそう言われてつい口を開いてしまった。

 でも実際のところ、覚えているのなんてほんのちょっとだけ。

 それも、楽しい記憶じゃなくて悲しい記憶。

 その断片だけでも話してみようかなって、自分らしくないのに思ってしまった。

「私、小さい頃からずっと言われてきたことがあるんだけど……。」

 その言葉は今でも覚えている。

 悲しくて苦しくて、言われると思ってなかった言葉。

「”あんたがいると不幸になる。みんなみんな。”って。」

 本当にその通りだと、私は思う。

 だってお母さんもお父さんも、私のせいでああなったんだから。

「その言葉は根拠がしっかりあって、私のせいでお母さんも事故に遭ったしお父さんもその後に……。」

 お父さんも事故で亡くなったお母さんの後を追って……。

 だから私のせいで二人とも、いなくなってしまった。

「そんなこととかもあって自分のせいだって思うことが増えたの。でも当然だよね、だって本当のことなんだから。」

 自嘲気味に思い出したことだけを話し終える。