腕の中で気を失った七月に後悔の念が押し寄せる。

 僕が六年前のことを話題になんか出したから……。

 そんな後悔が止まずに降りかかってくる。

 七月にとって昔のことは”なかった事”にしてあるから、思い出させないほうが良いのに……。

 だけどそんなことを思ったってもう遅い。

 見る限り相当な精神負担が七月にはかかっている。

 ……本当、何やってるんだろう。

 七月が取られそうって思って、一人で勝手に焦って……つくづく馬鹿だと思う。

「確かに、変なところで馬鹿だよな。」

 背後で聞き覚えのある声がして、ゆっくりと視線を移す。

 そこには壁にもたれかかって神妙な面持ちで僕を見る流星の姿があった。

「好きな女の子くらい、自分で守れるようにならないとダメだろ。」

 その言葉は当たり前すぎて、反論の余地がなかった。

 今の僕には合いすぎて痛いところを突かれ、言葉に詰まる。

 流星は僕の気持ちを察しているのか、全てを見通すような視線を向けてきた。

「俺だってそんなことで七月ちゃんがこうなるとは思ってなかった。だから、相当な負担がかかってるんだと思う。……七月ちゃんには重たすぎる負担が。」