「お母さん!お母さん!」

 夢の中で幼い少女が倒れている女性に向かって叫んでいる。

 これは……小さい時の出来事?

 そう理解するのに時間はかからなかった。

 今でも頭に焼き付いて、離れない記憶。

 忘れろと言われても、忘れられるわけがない記憶。

「や……お母さん!」

 涙を流しながら、幼い私はお母さんを揺さぶっている。

 そんな私に向かって、お母さんは微笑んだ。

 あの時みたいに。

『大丈夫、だよ?』



「……き、七月!」

 私を呼ぶ声が聞こえて瞼を開ける。

「ほ、星君……?」

 起きて早々視界に映ったのは凄く焦っている様子の星君だった。

 星君は私が起きたのを確認すると、安堵の息を深く吐いていた。

「七月、うなされてたけど大丈夫?」

 優しくそう聞いてくれる星君に、私は何も悟られないように首を横に振る。

「大丈夫大丈夫。変な夢でも見てたのかな?」

 知らないふりをしてそう言ってみる。

 本当は夢の内容も、なんでうなされていたかのも分かっているのに。