「もう何さ!急に叩くことないじゃん!」

「女子の寝顔を勝手に見たほうが悪い。」

 静かにそう言うと、星君は悪びれもせずにこにこしたまま言った。

「可愛いものを見るとついじっと見ちゃうでしょ?それと一緒。」

 いや、可愛いものと私を同類に入れないでいただきたい。

 もう呆れを通り越して、何なんだこの人は……と思うしかなかった。

「制服に着替えるから出てって。」

 今日も普通に学校あるし、星君とコントをしている場合じゃない。

 星君は「いちゃダメなの?」と可愛く聞いてきたが、そんなものはもちろん却下だ。

「当たり前。女子の着替え見ないで。」

 そう言って私はベランダに星君をつまみだした。

 なんとなく部屋以外の場所に星君を出したくなかったから。

 私は本日二度目のため息を吐いて制服に着替えた。

 そのまま身支度も整えて、星君に声を掛ける。

「星君、もういいよ。」

「七月、可愛い。」

 サラッとそんなことをいう星君をまたぺしっと叩いた。

 本当、口だけは達者だよね。