あなたの落とした願いごと

「…お前ら静かに出来んの?」


学校でそんな会話を繰り広げた10分後、私達は揃って学校内の図書館に移動していた。


特に空良君辺りが騒ぐと思っているのか、滝口君の声はいつにも増して感情が籠っていない。


「図書館に来ればやる気が出るかなと思って。良い案でしょう?」


この場所を選んだのは、他でもない私。


教室だと途中で誰かが介入してくる可能性もあったけれど、放課後の図書室は勉強目的で使用する人しか訪れないから。


好きなだけ勉強出来るよ、と付け加えた私は、我先に図書館へと足を踏み入れた。




「まず、過去を表す時に使う助動詞は”き”と”けり”だろ。で、これは“しか”で終わってるから”き”の已然形の形で、」


「ち、ちょっと待って。早い、早すぎる!」


そして、図書館で4人がけの机を確保して、全員で勉強を初めてから早くも30分が経過した。


私達の座り方は教室の席順と同じで、でも滝口君との距離はその何倍も近いから、興奮して心臓が口から飛び出てしまいそう。


そんな彼は同時進行で私の古文とエナの英語、空良君の数学を教えている上、自身も現代文のノートを開いている。


彼の教え方は確かに分かりやすいものの、基礎知識が頭に入っている事が前提で話が進んでいくから最早スパルタ以外の何物でもない。