エナの顔が近付き、可愛らしい色のアイシャドウが塗られた目が私を捉える。


言葉を変えれば、私は彼女の目しか見えていない。


「沙羅は本当に良くやってる。うちだって沙羅が私の顔見えてない事忘れそうになってたし、あの天然バカも完璧人間も、沙羅のそれには全く気付いてないよ」


口調は真剣そのものなのに、空良君を“天然バカ”、滝口君を“完璧人間”と呼んでいるせいで思わず笑いそうになってしまった。


「それに、今日もし亜美ちゃんに遭遇したら伝えようと思ってたんだけど、今のところ鉢合わせしてないしね。うちら絶好調だよ」


…えっ?


そのままの口調であっけらかんと伝えられ、今朝まさにその事を彼女に伝えそびれていた私は目を見開いた。


やっぱり、エナも福田さんの事を気にしていたのかな。


その事を尋ねると、エナが何度も大きく頷いた。


「当たり前だよ、うちらの雰囲気壊されたら嫌だもん」


ああ、何も伝えなくても彼女と思考回路が一緒だなんて、私は本当に幸運だ。


掠れた声でありがとう、と呟くと、


「いえいえ。じゃあ、この話は終わりね!」


彼女はパンパンと手を叩き、それと同時に周りの空気が明るく塗り替えられた。



「クッキー何味がいいと思う?ここは無難にプレーンかな」


「チョコと半々のやつもあるね。こっちも値段一緒だから一石二鳥じゃない?」