「今だけは単独行動にする。この店広いから、何かあったら連絡取り合えばいいだろ」


あれから、私達は神社で揃って参拝をした後、展示館を訪れて江戸時代に実際に使われていた物品や手記を見て回った。


教科書や資料集では学ぶ事の出来ない多くの知識を得た私達は、気づけば何時間もそこに留まっていたようで。


太陽が西の方へと大きく傾いた今、慌てて4階建ての大きなお土産屋さんに駆け込んだ私達は、同校の大量の生徒達がお土産の物色をしている側で班長の指示を聞いていた。


「了解!俺あっち見てくる、じゃあね!」


彼の言葉を聞いた空良君は、よっしゃあ、と拳を天高く突き上げた後、走って文房具コーナーへと向かってしまって。


「ねえ沙羅、あっちのお菓子コーナー行ってみようよ」


エナに誘われた私は、大きく頷き。


既にこの場から居なくなってしまった滝口君の後を追うようにして歩き始めた。



でもその時は、滝口君のこの選択が私の固く閉ざした黒い記憶の箱を開ける鍵になるなんて、想像もしていなかったんだ。




彼女に手を引かれて私達が向かった先は、南山大江戸町限定のクッキー売り場だった。


「そういえば私、お兄ちゃんからお土産頼まれてたんだった!」


そのクッキーを見た瞬間に運良く兄からの頼まれ事を思い出した私は、ぽんと手を叩く。