現に今、滝口君と共に鳥居をくぐった私の額からは汗が消え去っていた。
「…ミナミ、これ何だか分かる?」
ふと、滝口君が棘の無い声で私を呼んだから、驚いて立ち止まってしまう。
何だろう、と彼の指がさす方を見ると、そこには一対の狛犬の姿があった。
「ああ、狛犬でしょう?知ってるよ」
「どっちが?」
「…どっちが?」
私だって無能なまま参拝しているわけじゃ無いんだから、と返答すると、また聞き返された。
しかも、私の頭をこんがらがせるにはうってつけの。
「どっちも狛犬だよ。だってほら、顔一緒だし、」
狛犬の顔は分かるから、私は二つの狛犬の元に近寄っていってしげしげと顔を見比べた。
私から見て向かって右側が阿形の狛犬、左側が吽形の狛犬で間違いない、と思う。
「狛犬、なんだけどな…」
まさか、これは狛犬ではなくて狐等の他の動物だと言いたいのだろうか。
滝口君の方を見れずに固まった私の耳に聞こえてきたのは、
「あっははっ…やっぱミナミって面白ぇわ!」
彼の、楽しそうな笑い声だった。
(あ、)
今日初めて聞く彼の笑い声は、倒れそうだった私の心の土台を一瞬にして修復してくれる。
良かった、滝口君、やっぱり社会科見学を楽しんでるんだ。
こちらまで笑顔になれそうなその低い笑い声は、境内を駆け回って消えていった。
「…ミナミ、これ何だか分かる?」
ふと、滝口君が棘の無い声で私を呼んだから、驚いて立ち止まってしまう。
何だろう、と彼の指がさす方を見ると、そこには一対の狛犬の姿があった。
「ああ、狛犬でしょう?知ってるよ」
「どっちが?」
「…どっちが?」
私だって無能なまま参拝しているわけじゃ無いんだから、と返答すると、また聞き返された。
しかも、私の頭をこんがらがせるにはうってつけの。
「どっちも狛犬だよ。だってほら、顔一緒だし、」
狛犬の顔は分かるから、私は二つの狛犬の元に近寄っていってしげしげと顔を見比べた。
私から見て向かって右側が阿形の狛犬、左側が吽形の狛犬で間違いない、と思う。
「狛犬、なんだけどな…」
まさか、これは狛犬ではなくて狐等の他の動物だと言いたいのだろうか。
滝口君の方を見れずに固まった私の耳に聞こえてきたのは、
「あっははっ…やっぱミナミって面白ぇわ!」
彼の、楽しそうな笑い声だった。
(あ、)
今日初めて聞く彼の笑い声は、倒れそうだった私の心の土台を一瞬にして修復してくれる。
良かった、滝口君、やっぱり社会科見学を楽しんでるんだ。
こちらまで笑顔になれそうなその低い笑い声は、境内を駆け回って消えていった。



