あなたの落とした願いごと

空良君は滝口君の親友だから、彼の事を私以上に良く分かっていると考えたんだ。



「えーっ、沙羅ちゃんそんな事心配してたのー?」


けれど、彼は私の顔を覗いた後にケラケラと笑い声をあげた。


「大丈夫だよ、神葉はさっきから笑顔になってるし!これから行く所も神社だし、あいつのテンションも爆上がりになること間違いないよ」


「本当…?なら、良かった」


優しい空良君にお礼を言った私は、自然と彼の隣をエナに譲って滝口君の横に並ぶ。


…滝口君が喜んでいるのなら、良かった。



良かった、けど。



(そっか、笑ってたんだ…)


私、彼の隣にいることが多かったのに、何にも気づかなかった。


やっぱりどんなに頑張っても、言動だけでは判断できないものもあるんだ。


その事をやけに実感してしまって、


「神社行って近くの展示館寄ったらそのまま土産売り場行くけど、いい?」


という滝口君の声に、うん、と返事をしたものの、

私の心を造りあげてきた土台の部分が、ぐらぐらと揺れているように感じた。



それからずっと空良君の言葉が心のどこかで引っかかっていた私は、滝口君やエナが話しかけてきても上の空で返事をしていたようで。


「着いた」


滝口君のどこか嬉しそうな声で我に返り、はっと顔を上げると。


「あっ、神社…」


目の前の細長い石段の上。


色あせた赤色の鳥居が、私達を手招きしていた。