あなたの落とした願いごと

「わーっ、本物の商人みたいですげえ」


空良君が感嘆の声をあげながら一番乗りでお店へ足を踏み入れている、私も全く同じ気持ちだよ。


エナに続いて店内に入ると、そこにはまさしくドラマで観る様な光景が広がっていた。


着物を着た一般客がお饅頭を食べ、お茶を飲んで笑い合っている。


店員さんも気さくに声を掛けているし、壁に掛けられた浮世絵がいい味を出していて。


「凄い本格的!」


私達がそんな風に彼らを観察していると、すぐに席に案内されてメニューを渡された。


「何が良いかな。黒餡と白餡ならどっちが良いと思う?」


おすすめスポットの1つでもあるこの場所に来たいと言ったのは私だから、きっと私の気分は班員の誰よりも上がっていると思う。


メニューを開きながらそう尋ねると、満場一致で“白餡”を推す回答が返ってきて。


もちろん私も白餡一択だったから、すぐにそれを注文すると。



「お待たせ致しました」


それから数分も経たないうちに、全員分の饅頭が運ばれてきた。


ふとお店の外に目をやると、何人か同じ高校の制服を着た人が並んでいたから、きっと皆が考えていた事は同じだったんだろう。


「あっ、沙羅、お侍さんと写真撮りたいって言ってたよね?多分あの人と撮れるんじゃない?…すいませーん、お侍さーん」