小さな頃、家族皆で夏祭りに行って迷子になった事がある。



優しい両親が何処に行ったのか、私の手を引いてくれた兄が何故消えたのか、あの頃の私には理解が出来なくて。



ずっと服装と声で人を判断していたのに、パニックになった途端にその特徴すら思い出せなくて。




泣きじゃくる私に声を掛けてくれた若いカップルも、女子高校生のグループも、最終的に私の手を引いて迷子センターに連れて行ってくれた少し背の高い男の子も、私にとっては顔の無い巨人だった。




『ボク、此処の事よく知ってるんだ。着いてきて!』




でも、あの時そう言って私の手を取ってくれた男の子の手がとても温かかったことは、今でも覚えている。



その後、挙句の果てに、迷子センターに居た係の人を見て恐怖が最大限に達した私は、


『お化けー!』


と、泣き叫んでしまったんだ。





後から考えると笑い話だけれど、その後も数え切れない程人を間違えて迷子になった私にとって、




のっぺらぼうに囲まれる事になってしまったこの出来事は、消えないトラウマとなって私の心に巣食っている。