「私の願いだって、叶うはずないって分かってるはずなのに、…絶対叶うよって、背中を押してくれるような素敵な人なの、」


私が人の笑顔を見るなんて、夢のまた夢の話なのに。


彼は私の病気を笑う事なく、むしろその欠点を含めた全てを包み込んでくれた。



「だから、」


福田さん、貴方は今どんな表情をしているのかな。


私を睨み続けてもいい、最低と言いたげな顔をしたっていい。


でもね、私だって滝口君の事が好きなんだ。



けれど、私の話を聞いていた彼女が黙って引き下がるはずもなくて。


福田さんは私の方に顔を向けたまま、


「”だから”何なの?」


と、氷のように鋭い声をあげた。


「だから、…」


私、彼女に何て言えば良いんだろう。


ごちゃごちゃな頭を整理できないまま、もう一度私が口を開いたその時だった。






「ねえ、邪魔なんだけど」






いきなり空き教室のドアが開いて、


「福田って、そんな卑怯な手使う女だったんだ」


金に煌めく髪を揺らしながら、私達が話題の的にしていた張本人が姿を見せたんだ。