でも、今回は。


「一目惚れ…?」


一目惚れとは、相手をー顔をー見た瞬間に恋に落ちる事を指す。


私が一生かけても味わえないその感覚を口にした福田さんのせいで、確かに心に穴が開いたけれど。


滝口君の“顔”しか見ていない福田さんと、彼の“顔”以外を見てきた私とでは、大きな差がある。


滝口君の良い所は、他にも沢山あるよ。


それを知っているという自信にかけては、誰にも負けない。



「福田さんは、滝口君の顔以外の良い所を知ってるの…?」


今回ばかりは、首を縦に振れなかった。



「滝口君の良い所は、顔だけじゃないよ」


顔が分からない私だからこそ、言える事がある。


「滝口君は、…普段は素っ気ない態度ばかり取るけど、本当は凄く優しくて温かい心の持ち主なの」


それこそ、人混みが苦手な私の為に手を繋いでくれたり、泣いた時には頭を撫でてくれたり。


「いつも試験では成績が1位だけど、あれだって並々ならぬ努力の末に生まれたものだし」


4人で図書館で勉強した時、彼の勉強に対する意欲は誰よりも強かった。


「…それに、滝口君は、将来の夢に向かって沢山努力してるの」


私のせいで失った夢に向かって、もう一度。

彼は決して私を責める事をせず、今も必死で、過去の自分と、家族と、向き合い続けている。