あなたの落とした願いごと

そして、校長先生の話だけが長い始業式が終わった後。



「じゃあHRと自己紹介を始めます。名前と前のクラス、部活動、抱負を言って下さい」


去年もお世話になった熊本先生が、ぱらぱらと席に着いた私達の前に姿を見せた。


“熊ちゃん”というニックネームを持つ熊本先生の気さくで明るい性格は、生徒の間でも好評となっている。


「熊ちゃん今日も安定に美人…」


斜め前でかなり大きめの独り言を零した空良君に、


｢お世辞貰っても成績は高く出来ませんよ｣


と、栗色のショートヘアに黒縁の眼鏡をかけた先生が突っ込み、教室のあちこちから笑い声が上がる。



始業式が始まるまでの間、空良君は何度かそのユーモアセンスたっぷりな言動でクラス中の笑いをかっさらっていた。


だから多分、このクラスのムードメーカー的な存在は彼になるのではないかと思っている。



私がそんな事を考えていると、いつの間にか自己紹介が始まっていた。


「青木です。去年は3組で、 陸上部に入ってます。趣味は走る事です。よろしくお願いします」


「伊藤です。去年は4組で、部活はダンス部です。カラオケに行くことが好きです。お願いします」


それぞれが1分程の短い自己紹介をしていく中、私は急いで手帳を取り出して各人の持つ特徴を走り書きし始めた。