「文化祭当日ってさ、アドレナリンめっちゃ出てくる気がしない?」


「気のせいだよ」


「え!詩愛冷たあっ!」



時は巡り、あっという間に文化祭当日。


文化祭が始まる前、完璧にメイクを施した空良君とエナが、いつもの様に…とまではいかなくても、仲の良い会話を繰り広げている。


そこにあるたった1つの異変は、


「沙羅、本当に神葉君と連絡つかない?王子が居ないなんて笑えないよ?」


「うーん、何回も電話かけてるんだけど…」


滝口君が朝のSHRを過ぎても尚、学校に登校していない事だった。


スマホを耳に当て、ただコール音だけが鳴り響き続けるのを確認した私は、諦めて電話を切った。


もう、この一連の動作を何度繰り返しただろうか。


「寝坊?でも、完璧人間のあいつに限ってそんな失態はやらかさないよな」


「ね。どうしたんだろう」


現在、クラス内で行方知れずとなっているのは滝口君だけ。


しかも彼が劇の重要な役を務めている事もあり、滝口君と連絡が取れないこの状況下で私達3人は頭を抱えていた。


「あいつが遅刻なんてね…珍しいなぁ」


王子様用の服に着替えた空良君が、整った髪の毛をそっと触りながらごちている。


「そうだよね」


滝口君は、過去のあの経験から同じ過ちは2度と繰り返さないと思っていたのに。