あなたの落とした願いごと

塩対応で毒舌で、全てに興味が無いと言われていた滝口君の紡ぐ言葉は滑らかで、残酷で。


「その時、俺は祭囃子の交代の時間が迫ってたのに、それを無視したんだ。祭本番は時間厳守で行動しないといけないのに」



急いで山車へ向かっていた最中、滝口君は屋台の陰で泣きじゃくる女の子を見つけた。


「迷子だって分かったから声掛けたんだけど、その子は物凄いパニックに陥ってて、俺の声が耳に届いてるかも分からなかった」


『お兄ちゃーん!何処に居るのー!?』


「だから、その子の手を引っ掴んで迷子センターに連れて行ったんだ。俺は毎年此処の夏祭りに参加してたし、場所は覚えてたから」


『ボク、此処の事よく知ってるんだ。着いてきて!』


「そんで、その子を送り届けたのは良いものの…。大遅刻して山車に向かったら、親父にこっ酷く叱られてさ」


社会科見学当日、滝口君が遅刻をして現れた空良君に本気で注意していた理由がようやく分かった気がした。


彼は、空良君がいつか自分の二の舞を踏まないように、という懸念からあの行動を取ったのだろう。


「その直後、俺は神社出禁と次期宮司になる権利を放棄する事を言い渡された。今の本当の跡取り候補は俺の弟だし、…俺は未だに、此処に立ち入る資格はないと思ってる」


「っ…」


上手く、息が吸えない。