今、私の身に何が起こっているんだ。
滝口君の腕と触れ合った肩は一瞬にして熱を帯び、忘れようとした恋心が何事も無かったかのように再発する。
彼が言う“あの時”とは、夏祭りで私が迷子になったあの時を指しているのだろう。
でもどうして、貴方が謝るの。
「ううん、私、滝口君には本当に感謝してるの」
首を振った私はゆっくりと横を向き、そののっぺらぼうの顔を見て下唇を噛み締めた。
でも、平静を装って話し続ける。
「滝口君が、私が迷子にならないようにって手を繋いでくれたり案内してくれるの、本当に本当に嬉しかった」
彼の顔は、何の変化も見せてくれない。
「私、普段は声の高さとか髪型とか服装で人を判断してるの。滝口君は金髪だったし声も低くて特徴的だったから、絶対に覚えていられるって思ってた。…でも、全然そんな事無かった」
今朝のミスは、痛恨なんてものじゃない。
致命的なものだ。
「私、ずっと人の笑顔が見てみたくて、だから神様に…猿田彦大神にそうお願いし続けてきたんだけど…。治療法もないくせに神頼みなんて、馬鹿らしいよね」
猿田彦大神が“みちひらき”の神様だと知ってから、ますます願いは叶うと信じていた。
否、信じようとしてきた。
でも冷静に考えれば、人生はそんなに上手く行くはずがないんだ。
滝口君の腕と触れ合った肩は一瞬にして熱を帯び、忘れようとした恋心が何事も無かったかのように再発する。
彼が言う“あの時”とは、夏祭りで私が迷子になったあの時を指しているのだろう。
でもどうして、貴方が謝るの。
「ううん、私、滝口君には本当に感謝してるの」
首を振った私はゆっくりと横を向き、そののっぺらぼうの顔を見て下唇を噛み締めた。
でも、平静を装って話し続ける。
「滝口君が、私が迷子にならないようにって手を繋いでくれたり案内してくれるの、本当に本当に嬉しかった」
彼の顔は、何の変化も見せてくれない。
「私、普段は声の高さとか髪型とか服装で人を判断してるの。滝口君は金髪だったし声も低くて特徴的だったから、絶対に覚えていられるって思ってた。…でも、全然そんな事無かった」
今朝のミスは、痛恨なんてものじゃない。
致命的なものだ。
「私、ずっと人の笑顔が見てみたくて、だから神様に…猿田彦大神にそうお願いし続けてきたんだけど…。治療法もないくせに神頼みなんて、馬鹿らしいよね」
猿田彦大神が“みちひらき”の神様だと知ってから、ますます願いは叶うと信じていた。
否、信じようとしてきた。
でも冷静に考えれば、人生はそんなに上手く行くはずがないんだ。



