翌朝。


参拝を済ませた私は、普段通りに登校して教室へ向かう廊下を歩いていた。


昨夜、絶対に文化祭準備の疲れがたたったのだと思い込んだ私は、誰とも会話せずにそそくさと就寝した。


そのおかげなのか、今日は目覚ましもかけずに起きる事が出来て気分は絶好調。


神社でも、いつもより心を込めて“滝口君の笑顔を見れますように”とお願いしたから、ご利益がある事間違いなしだ。


気分も良くなってきた私は、鼻歌を歌いながら教室のドアを開けた。


今日は普段より登校時間が早かったのか、まだエナ達の姿は見えない。


自分の隣の席に田中君が座っているのを確認した私は、リュックを手に持ち替えながら近づいて行った。



「おはよう、田中く、…」


しかし。


挨拶をしかけた私の声は、中途半端な所で蓋がされる。


近付くにつれて感じる、確かな異変。

違う、この人は田中君ではない。

掛けている眼鏡や黒の髪色は田中君とそっくりだけれど、髪型や顔の輪郭、ついでに鼻の高さまでもが違う。


誰だろう、と思いつつ、多分私とは面識のない他クラスの人かな、なんて考えて、机にリュックを置こうと彼の前をすり抜けた時。


「おはよ、ミナミ」


てっきり面識がないと思っていたその人が、私の名を呼んだんだ。


「えっ?」


聞き間違いかと思った私は、弾かれたようにその人の顔を見る。