あなたの落とした願いごと

毎日欠かさず、どんな神様が祀られているのかも知らずにお参りをして、でも今までにその願いが叶ったことはない。


当たる確率はゼロに等しいと思いつつ、控えめに答えたのに。


「何だ、そっちは知ってんだ」


「へ…?」



どうやら、私の当てずっぽうな予想は当たってしまったらしい。


やっぱり知名度高いんだねあの神社!すっげえ!、等と1人ではしゃぐ空良君を完全に無視した滝口君の顔が、ゆっくりとこちらを向く。



その健康的に焼けた肌には、目も鼻も口もついていなかった。




「俺、滝口神社の宮司の跡取りだから」




「…えっ?」


彼が紡ぐ言の葉は、私の口を見事なまでに開けさせる。



滝口神社は、町外れの小さな神社なんかとは比べものにならない程の本格的な造りになっていて、たまに観光客も訪れる有名な場所。


毎年大規模な夏祭りが開催されて花火大会も行われ、辺りに所狭しと屋台が並ぶあの光景は圧巻で。


でも、まさか学年一の有名人が滝口神社と関係しているだなんて想像もしていなかった。


「宮司の、跡取り…」


「そうそう。神葉の父親、滝口神社の宮司やってるんだよねー。因みに、俺の父さんはそこの花火大会に提供する花火作ってんの」


ぽつりと呟くと、空良君が分かりやすく説明してくれた。



…という事は、だ。


滝口君も、父親が働くあの神社には相当な頻度で訪れているはず。