ドアを開けると、いきなりエナの大声が耳をつんざいた。


「えっ?」


黒板の前に貼られた紙を見て喚いているのがエナで、その頭を撫でているのが空良君で間違いないだろう。


「ど、どうしたの2人共…、」


エナの心からの嘆きは、宿題を忘れた、とかそんな次元から出るものではない。


おずおずと近付くと、空良君がのっぺらぼうの顔をこちらに向けた。


「沙羅ちゃん!大変なんだよー、熊ちゃんが勝手に席替えの席決めちゃったみたいでさ!」


ほら、と、彼は空いた手で黒板に貼られた席順の紙を示してみせる。


「ああ…」


なるほど、それならエナが喚くのも合点がいく。


「ねえ沙羅ーっ、うちら席離れた!最悪!何これ!」


脇目も振らずに叫ぶエナに苦笑いを浮かべながら座席を確認すると、


「うわ…」


エナの言う通り、私達は見事なまでに離れ離れになっていた。


エナは廊下側で滝口君の前の席、空良君は中央の席でエナと横が同列。


そして私は、窓側の前の方の席に振り分けられていた。


私、滝口君とも席が離れた…。


がっくりと肩を落とした私の耳元で、エナが囁く。


「ねえ、神葉君の斜め後ろの席見て」


(ん?)


そして、言われるがままに席順表を見直した私は、


「…有り得ない」


今度こそ、手で頭を抱えた。