先程の一件で頭の中は未だにこんがらがっているし、別れ間際の彼の声には最早生気が無かった。


滝口君は明るく振る舞おうとしていたのかもしれないけれど、他の人より声色から人の感情を読み取ってしまう私にとってはバレバレだ。


好きな人が落ち込んでいるのを見るのは、何よりも辛い。


(滝口君、大丈夫かな…)


1人で帰路についていた私は、くるりと後ろを振り返る。


視界に映るのは満開の花火と、人々の興奮した姿と、

滝口君の、私よりも小さな後ろ姿。



「滝口君!」


いてもたってもいられず、私は大声で彼の名を呼んだ。


花火の音の方が何倍も大きいのに私の声が届いたらしく、彼はゆっくりと振り返る。


「だい、」


大丈夫?って、聞けばいい?

大好きって、言えばいい?


口を開いても最後まで言葉が続かなくて、また大きく息を吸う。



「またね!」



脳内で考えた言葉のどれもが、今の滝口君には届かない気がする。


でも、学校でまた彼の姿を見て、今までと同じ様に話す事くらいなら出来るから。


大きく手を振ると、一瞬その場に固まった彼は手を振り返してくれた。



「おう!」



滝口君の考えている事の全ては理解出来ないけれど、


その返事が、今の私達を繋ぐ架け橋になっているような気がした。