あなたの落とした願いごと

相変わらずののっぺらぼう顔からは、その言葉を本気で言ったのか冗談で言ったのかすら判断出来ない。


どちらにせよ、皮肉を言われたという事実は私にも理解出来るのに、


「えっ何あの子、神葉君から褒められてるんですけど」


「滝口君の事知らなかったくせに、どうしてそんな真似が出来るわけ?」


と、取り巻き女子達が顔を寄せあって小声で言い合っているのが見える、丸聞こえだよ。


「ごめんね2人共!こいつ塩対応と毒舌極めてるからさ、申し訳ないけど目瞑ってあげてくれる?それで、こいつの友達俺だけだからさぁ、ついでに友達になってあげて欲しいんだよね」


困惑気味の私の様子を見た空良君が、あわあわと会話に割り込んでくる。


「あ、私は全然大丈夫だよ」


「塩対応じゃないし、友達大勢居るから」


慌てて顔の前で手を振ると、隣からは明らかに塩対応な声が聞こえてきて。


…先程、優しそう、と安心した事を全力で撤回したい。


「なーに言ってんの、そんな事言わずにもっと明るく振る舞いなって!そんなんだと嫌われるよ?」


「生まれ持った性格を直せと?」


「努力次第で人は変われる」


「お前人生何周目だよ」


何とか険悪な雰囲気を和らげようと奔走する空良君と、それを淡々と切っていく滝口君。


もし私が彼の表情を見る事が出来たなら、きっと彼は無表情か面倒臭そうな顔をしているんだろう。