さっき、滝口君と一緒にお願いをしたばかりなのに。

私は、ただ皆みたいに普通に人生を謳歌したいだけ。

人間の顔が見えない挙句、こんな感情を抱いてしまうなんて、

私は、こんな病気を持って生まれた自分が大嫌いだ。


身体は恐怖からガタガタと震えるし、肺は元の機能を忘れたのか、ヒッ、ヒッ、と酸素を吸収し続ける。


涙が地面に染み込み、背筋に悪寒が走って鳥肌が全身の毛穴に浮き上がる。


8年前のトラウマのフラッシュバックに見舞われた私は、怖くない、大丈夫、と、ひたすらに自分に言い聞かせていた。






それから、どれくらいが経ったのだろうか。


現実世界ではものの数分の出来事だろうけれど、体感では数時間が経った気がする。


必死に呼吸を整え、夏の暑さか恐怖からきたかすら分からない汗を拭った私は、ゆっくりと立ち上がった。


酸素が回り切っていなくてよろけたけれど、何とか足を踏ん張って持ち堪える。


滝口君もきっと、私を探しているはずなんだ。


彼を探さないとという動機が、私を何とか現実世界に繋ぎ止めていた。


人混みに紛れてしまったけれど、お互いそんなに離れていないと思う。


(花火大会が始まる前までに会わないと)


でも、顔をあげようとして踏みとどまる。


今の私の状態は社会科見学の時と同じ。


人の顔を見たら、また過呼吸になるだけだ。