「滝口君、何処…?」


ぽかんと口を開いたままの私は、すぐに我に返って辺りを見回した。


あの時、私が滝口君の手を離したからこんな事になったんだ。


辺りを見回すと、色とりどりの浴衣を着た人が目に入る。


手を繋いだり顔を見合せたりして楽しそうな彼らが向かう先は、花火大会閲覧席。


男の人と思われる人達は黒や紺の似たような浴衣を身に纏っていて、滝口君のものと区別がつかない。


(あっ、エナが写真撮ってくれたじゃん!)


写真を見ながら探せば、すぐに彼を見つけられるかも。


一筋の希望を胸に抱いた私は、急いでスマホのロックを解除した。



でも、私達4人のグループは、今朝の連絡事項で更新が止まっていて。


まだ、エナは写真を送信していなかったんだ。


(そうだよね…。普通は帰ってから送るよね…)


はあ、と溜め息をついた私は、スマホを懐にしまい直した。



早く滝口君と合流しないと、花火大会が始まってしまう。


滝口君の浴衣は他の人と酷似しているから、あの特徴的な金髪と狐のお面を頼りに探そう。


よし、と意気込んだ私は、再び顔をあげて皆の姿を見て、


「っあ、」


声にならない声を漏らした。


スマホの画面を見ていた間にまたもや大勢の人が移動を開始したらしく、私は人の創り出した大きな波に逆らうようにして突っ立っていたんだ。