あなたの落とした願いごと

私、滝口君の中にある地雷を踏んだのかもしれない。


何も言えないまま彼の顔を凝視していると、


「行くぞ」


彼はくるりと踵を返し、宮司さんから離れる様に早足で歩き始めた。


今までは私の歩幅に合わせてくれていたのに、何が彼をそこまで駆り立てたのか私には分からない。




「人が多くなってきたな…。大丈夫か?」


それから屋台をすり抜けて人混みをかき分け、私はされるがままに滝口君に着いて行った。


彼の言う通り、確かに屋台と屋台の間の道は人でごった返している。


先程まではまだ普通に歩けたのに、今は少し気を抜いただけでも人の波に流されてしまいそう。


しばらく黙っていた滝口君の口調は、今までと同じ落ち着いたものに戻っていて。


「全然大丈夫だよ」


彼の機嫌が元に戻った事に安堵しつつ、私はそう返事をする。


「良かった」


滝口君の声に、微かに笑顔の要素が含まれているのが伝わった。



「俺、今から行く所は誰にも教えてないんだ」


「うん」


再び滝口君が話し始め、私は静かに耳を傾ける。


滝口君は前を向いているけれど、その声はやけにはっきりと聞こえて。


「他の人達は花火閲覧専用の場所に行くんだけど、あそこはそこ以上に綺麗に花火が見えるんだよ」


だから、お前も誰にも教えんなよ。


(なっ、…!)