あなたの落とした願いごと

そうして彼にエスコートされるように歩きながら、私は小首を傾げる。


私、滝口君が発したのと似たような台詞をどこかで聞いた事がある気がする。


(…いや、気のせいか)


滝口君に言わせれば私は“馬鹿”なわけだから、変な所で記憶が混同する事も良くあるだろう。


ふふっ、と笑った私は、人混みをかき分けて進んで行った。



「よし、着いた。あそこの係の人にお名前と年齢言おうか」


それからしばらく右折と左折を繰り返し、私達は迷子センターなる場所に辿り着いた。


テント張りの簡易的なその場所には、確かに迷子センターと大きく書かれていて。


私も此処に来た事があるんだな、と、どこか不思議な気持ちになった。



ちょっと待ってろ、と言い残し、滝口君は男の子と一緒に係の人の所へ向かって行く。


「あ、ちょっと!」


先程から私にも何か出来ないか考えを巡らせていた私は、ギリギリでアイデアを思いついて2人に駆け寄った。


係の人の邪魔にならないよう、数秒で話を終わらせよう。


「はい、これどうぞ」


既に泣き止んだ男の子の前でしゃがんだ私は、自分が持っていた白いヨーヨーを差し出した。


「これはね、このお兄ちゃんが取ってくれたの。お母さんが此処に来るまで、これで遊んで待ってるんだよ」


男の子が私の何処を見ているかなんて分からないけれど、彼がそれに興味を示した事は確か。