あなたの落とした願いごと

「うん。お前と同じだったらあれかなと思って、色違いのやつにしたんだけど」


嫌なの?

そう聞いてくる彼は、完全に私をからかっている。


そんなわけない、むしろ良過ぎて倒れてしまいそうだよ。


そのちょっとした心遣いにも滝口君の思いやりの心が溢れていて、果たして彼はどんな教育をされて育ったのだろうか。


「全然嫌じゃない!」


ぶんぶんと首を横に振った私は、飛び跳ねたい気持ちを抑えて狐のお面を付けた。


顔に付けるのではなく、右側にお面を向けてみる。


「似合ってるよ、お嬢ちゃん」


お面屋さんのおじさんに褒められ、満更でもない気持ちになる。


そのまま滝口君の方を向くと、いつの間にか彼もお面を付けていて。


そのお面は左側に向かれていて、まるで狐同士が見つめ合っているみたいだ。


元々滝口君は私の右側に立っていたから、私が彼を見る時は必然的にその狐のお面を見る事になる。


普段は目の位置を模索しながら話していたけれど、これからはそのお面を彼の顔だと思って話してみようかな。


何だか自分も普通の人になったみたいで、身体の芯から嬉しさで温まっていく気がした。



その後、私達は屋台を巡りながら残り時間を過ごした。


滝口君は焼きそば、私は焼き鳥を食べて胃を膨らませ、山車の近くに行った時には、滝口君が楽器の名前を教えてくれた。