あなたの落とした願いごと

…もし、この世に告白なんて概念が無ければ、

私が、これ程までに“滝口君との関係が崩れる”という心配をしなくても済むのに。


せめて彼の顔が見られれば、全てが上手くいくと信じられるのに。



私が心の中でそんな事を考えているとは夢にも思っていないであろう滝口君は、


「お前先買えよ」


と、私の方を振り返ってくる。


その顔はいつもと変わらなくて少しの口惜しさを覚えながらも、ありがとう、と、お礼の言葉を口にした。


その後。


「んー、美味しい!」


無事にりんご飴を購入した私達は場所を移動し、木の陰で早速それを食べ始めた。


「ああ」


りんご飴の甘さが、少し蒸し暑くて汗ばんだ私の身体を癒してくれる。


滝口君がサクサクと音をいわせてりんご飴をかじるのを眺めていた私は、そういえば、と口を開いた。


「滝口君って、元はこの辺りの大地主だったんでしょう?」


「…誰に聞いた」


「空良君、です」


「あいつ本当に口軽いな」


りんご飴から口を離した彼は、何なんだよあいつ、と、大きく溜め息をついた。


「って事は、滝口君は特別待遇とかされなかったの?」


もしかしたら、こうした屋台の商品が無料で食べられるとか、私のような一般庶民とは別の待遇は受けられないのだろうか。