はしゃぎながら神聖な世界に足を踏み入れたカップルに続いて鳥居をくぐると、ひっきりなしに聞こえ続けていた人の声が一瞬聞こえなくなった気がして。
この感覚、社会科見学の時に訪れた神社で感じたものと同じだ。
「凄いよ滝口君、雰囲気が変わった!」
その現象に神がかった何かを感じた私は、興奮気味に彼の名前を呼んで後ろを振り返ったものの。
(ん?)
大きな朱色の門を見上げたまま、動こうとしない滝口君の姿を見て首を捻った。
滝口君、何しているんだろう。
「何してんのあいつ。ってか見て詩愛、この鳥居よじ登れそうじゃない?」
私と同じ事を感じたらしい空良君は滝口君の方を一瞥したものの、すぐに鳥居の柱の方に駆け寄って行ってしまった。
もちろんエナも彼氏の後を追いかけて行ったから、今滝口君を見ているのは私しかいない。
彼は瞠目しているようにも見えて、何かの儀式でもしているのかと不思議な気分になる。
その時。
「……」
滝口君の掠れた小さな声が、風に乗って私の鼓膜を震わせた。
「…え?」
一瞬聞き間違いかと思ったけれど、私が好きな人の声を間違えるわけがない。
まして、顔を覚えられない私にとって、声は人を判別する為の命綱だから。
(なるほど、そんな儀式もあるんだ…)
この感覚、社会科見学の時に訪れた神社で感じたものと同じだ。
「凄いよ滝口君、雰囲気が変わった!」
その現象に神がかった何かを感じた私は、興奮気味に彼の名前を呼んで後ろを振り返ったものの。
(ん?)
大きな朱色の門を見上げたまま、動こうとしない滝口君の姿を見て首を捻った。
滝口君、何しているんだろう。
「何してんのあいつ。ってか見て詩愛、この鳥居よじ登れそうじゃない?」
私と同じ事を感じたらしい空良君は滝口君の方を一瞥したものの、すぐに鳥居の柱の方に駆け寄って行ってしまった。
もちろんエナも彼氏の後を追いかけて行ったから、今滝口君を見ているのは私しかいない。
彼は瞠目しているようにも見えて、何かの儀式でもしているのかと不思議な気分になる。
その時。
「……」
滝口君の掠れた小さな声が、風に乗って私の鼓膜を震わせた。
「…え?」
一瞬聞き間違いかと思ったけれど、私が好きな人の声を間違えるわけがない。
まして、顔を覚えられない私にとって、声は人を判別する為の命綱だから。
(なるほど、そんな儀式もあるんだ…)



