あなたの落とした願いごと

2人は似通った紺色の着物を着ていて、顔は分からなくてもそれが似合っている事は容易に理解出来た。


「久しぶりのメンツだね!…って、詩愛可愛すぎるんだけど?こういう色の浴衣も似合うなんて、さすが俺の彼女じゃん」


久しぶり、と近付くと、早くも自分の彼女の垢抜けた姿に目をとめた空良君は、予想通りにエナを褒めちぎり始めた。


「可愛いでしょ?大人っぽく決めてみたんだ」


自分より少し背の高い空良君を上目遣いで見上げ、その手に自分の指を絡ませるエナは、もう完全に2人きりの世界に入る気満々だ。


「…おい」


そんな2人を微笑ましく見守っていたら、滝口君から声を掛けられた。


「滝口君…。あの、久しぶりだね」


道中はエナと話す事に夢中で、滝口君と何を話そうか考えてくるのを忘れてしまった。


ただでさえ、好きな人に話し掛けられて頭が真っ白なのに。


初対面か、と突っ込みたくなる程によそよそしい挨拶をしたら、おう、と、いつも通りの返事が返ってくる。


そして、



「お前、そういう色の浴衣着るんだな」



何と、彼が自ら私の着ている浴衣の色について話題を振ってきたんだ。


「うん…!自分で選んでみたんだけど、どうかな」


浴衣だけではなく、お店の人が施してくれたメイクや髪型を見せたくて、くるりと一周回ってみせる。