「私が2人の恋のキューピットになるから!神葉君と沙羅のカップルとか、お似合い過ぎて倒れそうだよ」


「お似合いって、…絶対そんなわけないよ」


彼女はお世辞ばかり言ってくるから、どうにも恥ずかしさが先行する。


「何言ってんの!沙羅はめっちゃ可愛いんだから自信持ちな!」


でも、彼女の異常なまでのテンションの高さは、私のコンプレックスや劣等感を拭い去る程の大きな優しさを含んでいて。



「…そうだね。分かった」


彼女に全てがばれてしまった以上、もう言い訳も無駄だろう。


例え何人もの女子と滝口君を巡って壮絶なバトルを繰り広げる事になろうとも、私は私に出来る事を精一杯するしかない。


それに何より、滝口君の良い所は誰よりも知っているはずだから。


そう感じた私が素直に受け入れると、


「夏祭りで神葉君の気を惹かせるよ!私にはゴールインの未来まで見えてるんだから!」


彼女は、わざとらしくキンキンした声をあげながら私の手を取り、上下にぶんぶんと振り下ろした。


「…うん、!」



もう、半分彼女の勢いに飲まれるような形になってしまったけれど。


エナが私のくすんだ心を綺麗に洗い流してくれた事だけは、変えようのない事実だった。