長い間を空けて、エナの口が動いたのが読み取れた。


もう、点呼の時間はとうに過ぎていた。


「うち、外見より内面が魅力的だって褒められる方が余っ程嬉しいけどね?」


まあ、空良には顔がタイプって告白されたんだけどさ!、と、エナはカラカラと笑ってみせる。


(そっか、…)


彼女の言葉は的確で、もう完敗だ。


「それにうちが言うのもなんだけど、神葉君は沙羅に嫌な態度取ってないし、勝算はあると思ってるよ」


少なくとも、亜美ちゃんよりはね。

人名の所だけわざとらしく声を潜めたエナが可笑しくて、思わず吹き出してしまう。


「そうなの、かな」


「当たり前じゃん!」


頭を掻きながらそう言うと、エナはバンバンと自分のリュックを叩きながら声をあげる。


彼女が真っ直ぐ思っている事をぶつけてくれるから、今まで私は幾度もなく助けられた。


「いい?沙羅は顔が覚えられない代わりに、人の隠れた良い所を沢山見つけられるの。そこが沙羅の長所だからね」


彼女はぬっと顔を近づけ、勿体ぶるかのように人差し指を立てた。


「だから、くよくよ悩まない!まずは夏祭り、思いっきり楽しむよ!」


えいえいおー、と、最後は天に拳をつきあげるその姿は、もうこの状況を楽しんでいるとしか思えない。