あなたの落とした願いごと

そりゃあ、彼だって私に再びあんな風になってもらいたくないだろう。


「神葉ー、お前やれば出来んじゃん!良い子良い子」


滝口君が意見を変えた事に対し、空良君は彼の金髪をぐしゃぐしゃに撫で回し始めた。


「止めろって」


がっちりとその筋肉質な腕をつかんだ滝口君は、何処か照れ隠しをしているみたいに思えて。


嬉しそうに空良君に抱きつくエナを横目に、ごめん、と再び謝ると、


「何でお前が謝ってんの。全部俺の勝手なんだけど」


と、誰もが惚れてしまうような格好良い台詞が返ってきた。


もちろん、その言葉を聞いた私が改めて胸をときめかせた事は言うまでもない。



こうして私達は、4人で夏祭りに出掛ける、という新しい約束を交わしたんだ。





✧**・.。*



その日の放課後、私は部活に行く為に更衣室で着替えをしていた。


「今日は男バス休みだっけ?」


「そうだよ、だから今日はアリーナの全面バド部が貰った」


「ナイス」


1人で着替えをしていると話し相手がいないから、嫌でも他の女子達の声が耳に入ってくる。


会話の内容からして、更衣室の中央にいる人達はバドミントン部なのだろう。


(そういえば、エナもバドミントン部だよね)


ふとそんな事を思い出した私は、その子達の中にエナの姿がないかさりげなく目線を上げる。