あなたの落とした願いごと

「無理。あれは弟が引き継いだし、今からじゃ練習しても間に合わない」


淡々とした声で一蹴されてしまった。


「そっかー。なら仕方ないね。今年はうちらだけで行く?まあ、うちは行くの初めてなんだけど」


「そうするか。俺も小さい頃に1回行ったきりだけどね」


エナ達の声は多少の残念さを含んでいたけれど、既に話は”滝口君を除いた3人で行く”という方向にシフトしていて。


(滝口君が来ると思って行きたいって言ったけど、仕方ないよね)


彼らの会話を聞く限り、両者共に夏祭りについて詳しくなさそうで、迷子になったら再会できないかもしれない、なんていう弱い考えに支配されそうになったけれど。


「…そうだね」


優柔不断な私は、きっぱりと決断する事すら出来なくて。


結局、滝口君を誘う事も、エナ達の誘いを断る事もせず、私は同意の言葉を口にした。



その時だった。


「は?ミナミも行くの?」


今までずっとその話をしてきたのに、まるで今初めて私が参加するのを知ったかのような声で、滝口君が私の名を呼んだんだ。


滝口君の何もない顔がこちらを向き、私は驚きながらも微かに頷く。


「あそこの夏祭り、信じらんないくらいの人で賑わうんだぞ?お前、人混み無理って言ってたのに平気なのかよ」