あなたの落とした願いごと

彼の発した一言は、先程見た鋭利な目の持ち主とは程遠いと感じてしまう程に落ち着いていて。


私の手からチョコを掴み取った彼は、それらを一気に口の中に含んだ。


にっが、という感想が聞こえてきたものの、私の心はそれどころではない。


(滝口君の手、すっごい温かかった…!)


またもや、私は自分の胸の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じていた。


頬が熱いし、意図的に口角を下げないとにやけてしまいそう。


滝口君に手を触られただけでこんな風になるんじゃ、そろそろ身体がもたないかもしれない。



「神葉君、結局亜美ちゃんから告白されたの?」


チョコを食べた事で多少機嫌が良くなったのか、滝口君の周りの雰囲気が若干柔らかくなった気がする。


その変化にいち早く気が付いたエナが、丁寧な口調でゆっくりと尋ねた。


「ん。夏祭りも誘われたけど断ったわ」


チョコを舐めているからか、彼の声は少し滑舌が悪くて可愛らしい。


「え、夏祭り?それって滝口神社の?」


でも、彼の回答内容に多少の違和感を感じた私は首を傾げた。


「そ」


その返事は、相変わらずぶっきらぼう。


でも。


「あっ、…そうなんだ、」


「まじかよー!そんな事言ったらお前、これで夏祭り参加しない歴8年じゃんか!」


今の今まで夏祭りについての会話を繰り広げていたエナ達カップルは、ほぼ同時に額に手を当てて嘆き始めた。