砂浜に描いたうたかたの夢

奥の部屋にいても、一言一句ハッキリ届く父の声。


そういえばあの部屋、昔はお父さんが使ってたんだっけ。

数年ぶりに帰ってきたら犬部屋になってるって、そりゃ驚くよね。っていうか、犬飼い始めたこと知らなかったのか。


一気に騒がしくなり、集中できそうにないため一旦中断。重い腰を上げて廊下に出た。



「あっ、一花。ちょっとこれ持ってって」



すると、荷物運びを手伝っていた智がスイカを渡してきた。

うわっ、重っ。1番デカいやつを買ったな。


両腕で抱きかかえて台所に運び、テーブルの上に置いた。

手伝うのはいいんだけど、というか、お世話になってるから当然なんだけど……重い物は力がある人間が運んでもいいんじゃない? 今朝私のこと持ち上げて起こしたんだからさぁ。

内心文句を垂れつつ、今度は買い物袋を受け取り、バケツリレーのように運んだ。







オードブルとお刺身を平らげた、午後1時過ぎ。



「ねぇ、なんか面白いネタない?」



座布団を枕にして横たわっている父に尋ねた。



「ネタ? 何の」

「絵日記。まだ1個も思い浮かばなくて」