砂浜に描いたうたかたの夢

「ニャ~」



セミの声に混じって、鼻につくような声が聞こえた。


……そう、原因はこいつ。猫だ。


普段は11時にベットに入っているのだけど、今は曾祖母達の就寝時間に合わせて10時台に寝ている。

昨夜も10時半に消灯し、眠りに入る前のうとうとした感覚を楽しんでいた。


そんな時……猫の威嚇する声が聞こえて、目が覚めてしまった。

縄張り争いをしていたのか、鳴き声だけじゃなく、ドタバタと暴れる音まで聞こえてきて。日付が変わっても全然寝つけなかったのだ。


──ツクツクボーシ、ツクツクボーシ。


再び溜め息をつくと、今度は別のセミが鳴き出した。


──ツクツクボーシ、ツクツクピー、ツクツクボーシ。



「っもう! うるさい!」



バンとちゃぶ台を叩いて大声で吐き捨てた。


一生懸命鳴いているだけで、セミには何の罪もない。

けど今は、その不安定でぎこちない声が、失敗した私を嘲笑っているように聞こえる。


あの時布団で寝なければ。居間に戻らず、頑張って着替えるほうを選んでいれば。計画が崩れずに済んだのに。

少しだけなら……の誘惑に負けた自分が悔しい。